学校経営・学校会計分析・教員研修のA工房

東京で進路指導や教員チームなどの育成、研修、学校評価、授業評価に携わるコンサルです

子どもを伸ばす(3)

子どもを伸ばす(3)

 このテーマとしては、「生徒のチーム化」を取り上げたいと思いますが、まず、今回は、その前提として「生徒ポテンシャルの把握」ということを中心に考えていきたいと思います。


 一人のポテンシャルの高い生徒が、確実に力をつけていくには、上昇しようとする生徒集団に身を置くか、もしそれが得られないなら、逆に一人になることが必要だと思います。もっとも避けるべきは、全体として志の低い生徒集団に埋没させることではないかと考えています。また、個々の生徒が最大限、どこまで伸びうるかについては、バラツキのあることは仕方のないことなのですが、いずれにせよ、一般にどの子も現状よりは知的に発達する可能性を秘めていますから、結局、この集団全体が持つ「志」というものは、ほとんどすべての子どもたちにとって重大な意味を持ちます。

 ある学校が、その生徒の能力をきちんとはかり、どこまで伸ばすかについて見通しを持つことは、具体的な指導案を立て、実行に移す前提となります。まず、個々の生徒について継続的にポテンシャルを察知するための観察を実行していくことが肝要でしょう。情報は常に担任が集約するとしても、観察は複数の教員、場合によっては生徒と接触のあり得る事務職員を含めて実施することが効果的だと思います。着眼点の違いにより、多角的にかつ立体的に生徒の将来像が見えてくることになります。ここで大切なことは、あくまでも生徒のポテンシャルを図るという意味から、生徒のよさを観るということでしょう。別稿でも申し述べましたが、生徒の悪い点には気付きやすいものです。このため、できれば観点別の観察ノート(シートでもよい)を準備し、個々の生徒について当てはまる事象を目にしたら、記入していくようにするとよいと思います。いいことは、記録しないと忘れてしまうものです。また、実際には「おやっ!」という気づきは、意外な一面に直面したときに起こるもので、案外、事前に用意していた観点には当てはまらない事柄もあるはずです。従って、生徒のポテンシャルを知るのによい事象に出会ったら、基本的には何でも記録するという癖をつけることも大事なのではないでしょうか。

さて、こうして得たポテンシャル情報は、必要に応じて担任に届けられなければ意味がありません。個々の情報は、バラバラの状態では死んでいるのと同じですし、何といっても生徒の指導に責任を持つのはその子の担任です。実は、この情報伝達のしくみを教員組織の中に整えることが、一番難しいといえます。教員の組織論にも触れることで、ここでは詳説できません。是非、学年会などで詰めて頂きたいと思います。

 この潜在的な将来性をもとに、教師の間で具体的目標として叙述します。具体的目標とは「一般入試でM大までいかせよう」とか「旧帝大レベルまでは伸ばせる」、あるいはもっとチャレンジングにはっきりと「東大合格」などある程度具体的な到達像を描く必要があります。「かなりのところまで行けるのではないか」という曖昧なレベルでは、具体的指導に移行できません。この目標に向けて、さまざまな工夫の中で伸ばしていくことになるのですが、一見実現困難に思われるような目標を立てた場合、子どもたち自身をその気にさせるという大事な関門を経なければなりません。生徒は、自分のポテンシャルが分からないのが普通ですから、相手がよほど楽天的な性格でない限り、この部分は難航する場合が少なくありません。

 そのひとつの、そして最適な対処方法は、生徒のチーム化です。これは類似の目標ごとにさまざまな場面で該当生徒を共通に扱い、チームにしてしまうというものです。生徒への自己ポテンシャルの認識を「徐々に」行うのが、この方法の役割です。特に個々の生徒にとって現状から推して「難しい」と思われる目標に到達させるに際しては、非常に効果的です。予備校などでよく採られている「早慶コース」とか、「難関国立クラス」などというのもよく似た発想なのですが、気をつけなければならないことは、生徒の現状から見て、「妥当」であり「落としどころ」というようなグループ分けでは、そのチームは決して伸びないということです。ある意味では逆効果となります。まさに、冒頭述べた、「志」を高くもつ生徒集団を作り出すのですから、この前提を崩してはなりません。

 一方、この方式は、公教育では一部タブー視されてきたのも事実です。生徒の成績状況によって指導に差異を設けることに引っかかりをもつ先生がいらっしゃるのだと思います。しかし、個々の生徒の現状から推して、可能な限り引き上げるということを目的にしているのですから、むしろ、どの生徒にとっても適切な、そしてずばり伸ばしてくれる指導を目指した方法です。この点を考えれば、ことさらに「差異」の部分を問題視する必要はないはずです。

 こうした上昇志向で設定した複数併存のチームを単位に、いろいろと学習指導を進めていくことになります。詳細は、次稿に譲りたいと思います。

2009年4月10日

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