学校経営・学校会計分析・教員研修のA工房

東京で進路指導や教員チームなどの育成、研修、学校評価、授業評価に携わるコンサルです

子どもを伸ばす(2)

子どもを伸ばす(2)

子どもを伸ばす(1)」では、生徒の学力を大きく伸ばすには、授業の質や学習量に加えて、何らかのプラスαが必要であるということを指摘しました。そして教育のゴールとしての生徒の姿については、協働と思いやりのある関係を構築する必要のあることを示しました。生徒の学力伸張という観点からは、当然のことながら①授業の方法がきちんと生徒実態に合致していて、かつ②授業内容も、集団が目標とするレベルの大学入試から割り出された学力を、段階を追ってつけさせていけるものでなければなりません。多くの学校では、この二点について、悩まれていることが多いと思います。しかし、生徒集団の中での「協働」と「思いやり」については、なかなかその必要性が認識されていないようです。

私がこれまで、急速に成果をあげられている多くの学校の先生方と接したとき、先生方が口を揃えておっしゃるのが、「温かい学年は結果がよい」ということです。進路実績が上昇していく過程では、まず、数年間は学年によるバラツキが大きいものです。入学段階での生徒の学力が、年ごとに異なっているためともいえますが、同時に、生徒集団を指導する教員の態勢も、学年によって非常に異なっているからだともいえるのではないでしょうか。学校として、生徒を段階的に引き上げていくノウハウも乏しく、いきおいそれぞれの学年担当者が、生の生徒を相手に試行錯誤するのですから、これはある程度やむを得ません。同時に、主要な教員の人格が、対象である生徒集団をどのようにリードしているのかに着目すると、やはりそこには千差万別のアプローチが展開していることに気付かされるはずです。ある学年は、上手に生徒のやる気を出させているのに対して、別の学年では競争を過度に煽って、何とか勉強させているというところもあるでしょう。

 念のため申し上げておきますが、私は「競争」を否定しません。ただし、競争は生徒自身から発する内発的なものでなくてはならないと考えております。本当のところ、現実の競争は、他者とのそれではなく、むしろ自分自身の楽をしたい心とのそれであるといえるのではないでしょうか。また、大勢の生徒の中には性格的に必ずしも「競争的」にならない者も少なからず見られるため、競争の煽動のみをモチべーティングの手段とした場合は、指導としては弱いと思っています。生徒の内発的な競争心を引き出す指導に加え、それとは異なる動機付けを行わないと、結局、学年全体としての成果は挙がらないのではないでしょうか。恐らくこの部分が、「温かみ」に相当すると思います。

 では、こうした温かみのある指導はどのようにしていけば実現するのでしょうか。個々の生徒の性格や、学年全体のカラーもありますから、一概にはいえませんが、教員として心がけるべきこととしては次のようなものがあると考えます。

  1.  生徒を褒める視点を常に持つこと
  2.  ホームルームでは、担任が生徒について順に「感心したこと」を少しずつ発表すること
  3.  目立たない生徒に、小さくてもよいので意図的に活躍の場を与えるよう配慮すること

の三点です。1と2は非常に重要です。学校評価アンケートなどで「先生はほめてくれますか?」という質問をすると、まず、非常に低い評価となります。「はい」と答えるのはたいていの場合は30~50%くらいです。他の項目では非常に素晴らしい評価を得ている学校でも、この項目だけはだめです。換言すると、日本の先生方は、生徒を余り褒めません。実際、教員の立場からすると、生徒のマズイ点は結構目につくものです。特に進学実績をあげようと意気盛んな学校の場合、生徒の状況が思うようにならないと、そのことばかり気になります。しかし、生徒が大きく伸びるには、本人が、自分は着実に力をつけていけるのだという自信を持つ必要があります。できなかったところより、できるようになった部分を褒めることは、こうした自信につながるものです。

 また、生徒を褒めるのに、いつも担任がご自分で言う必要はありません。他の先生にお願いして授業の際に、あるいはクラブ活動において指導者から、「担任の~先生、おまえのこと褒めていたぞ」と言ってもらったほうが効果的な場合も少なくありません。逆も真で、教科担当の先生が気付いたことを担任に告げておいて、担任から褒めるというのも、生徒の感動は大きいのではないでしょうか。こうしたチームワークが利く学年、教員集団は強いと思います。

 3も基本的には同じ発想からあげてみました。要は生徒に成功体験を積ませ、自信を持たせること、こうしたことが「温かみ」を生み、生徒が他の生徒を尊重し、また、自信を深めていくのだと思います。

 是非、ひとつでもふたつでも、生徒に自信を持たせる工夫を新学年のはじめからやってみては如何でしょうか。褒める内容は、勉強のことだけではありません。生活態度、言葉遣い、小さな善行、なんでもよいと思います。

 この稿の関連としては、次回は、「生徒のチーム化」ということを考えてみるつもりです。

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