学校経営・学校会計分析・教員研修のA工房

東京で進路指導や教員チームなどの育成、研修、学校評価、授業評価に携わるコンサルです

保護者とのコラボ

保護者とのコラボ

 保護者は学校にとって、何でしょうか。スポンサー、お客さんの親、ステークホルダーのひとつなど、経営的視点からは、さまざまに表現できるでしょう。本当は「お客さんの親」ではなくて「お客さま」そのものだと思いますが、これはまあ、置いておきたいと思います。

 しかし、生徒を育てるという教員本来の視点からすると、上のような経営的視点に加え、保護者を違った目でみる必要があるように感じます。たとえば、進路指導という視点からすると、保護者には実に多くのことが期待できるはずです。子どもたちにとって最も身近な大人として、職業的モデルであり得ると思います。特に女子にとっての父親は、女子を巡る職業環境が大きく変わってきている中、非常に重要なものがあると思います。家庭として、学校での指導を補完し、助言を与えてくれることもあるでしょう。また、保護者は、職業生活をする上で、多くの知人をお持ちですから、家庭の役割として、生徒に多くの職業情報を与えるべく、知人と引き合わせることをする場合もあります。こうした家庭の働きかけは、生徒にとってはかけがえのないものですから、これを得られる生徒については、利用させない手はありません。

 さらに、もう一つ注意すべき視点として、多くの家庭では、自分の子どもに対して、進路面でさまざまな思惑があるということです。中には完全に子どもの行きたい方向に行かせます、と言い切る保護者もいますが、そういう親も、高校3年の夏以降、「実は」と本音を出してくることが少なくありません。

 教員にとって、生徒の進路指導は、そのもつ任務の中での重要な柱のひとつでしょう。早くから生徒に働きかけたり、生徒の内面の変化を観察して、高3の大事なときを迎えなければなりません。その意味で、以上のような保護者に期待できる役割は上手に利用していきたいですし、同時に、早くから保護者の意向を確認し、あるいは受容したり、あるいは対話によってより好ましい方向をともに探ったりという取り組みを行う必要があるのではないでしょうか。肝心なときにそれまでの積み重ねが崩れるような事態を招かないためにもこの点は、一度真剣に検討してみる必要があると思います。

 中高一貫生の場合、早い生徒は中学2年次に将来相当程度伸びるのではないかという兆候を見せ始めます。これは必ずしも学業成績がよい、ということに限らず、数値上は成績が悪くても、読書傾向や作文の表現・内容が背伸びしたものであったり、特定教科での発言や解答が、独特の視点によっていたりと、これは千差万別です。まずは、なるべく早い時期に一人一人の生徒について、それぞれの将来性をいい意味で発見していくことが大切です(この点は、いずれ別の稿で考えたいと思います)

 ところでもし、あなたが担任として、あるいは教科担当者として受け持っている生徒に光るものを感じたとき、どうしますか。生徒は自分の将来性など分かるべくもありません。保護者も多くの場合は同様でしょう。気付いた先生方が、この事実を大切にし、これを伸ばして開花させるには、確実に保護者との意思一致が肝要です。私の場合、電話連絡と家庭訪問を多用して、中学校2年~高校1年くらいの期間に、担当の保護者との意思一致を多く行った記憶があります。これは高校3年の秋、いよいよ進路を決めていくというときにたいへんな効力を発揮したように思います。何しろ、既に概ね路線は出来上がっていますから、保護者もそのつもりでいますし、もちろん生徒も迷いはありません。何よりも、高2時点で、勝手に科目を絞って、3年の三者懇談で妙な流れになるということがありませんでした。

 保護者とのコラボについては、何も家庭訪問がすべてではないでしょう。しかし、それぞれ先生方のお仕事の状況が許す方法によって、可能な限り保護者との連絡、意思疎通を図ったほうが、結果はよくなります。お若い先生も、遠慮せず、教育のプロとしての見解や意見を打ち出してみて頂きたいと思います。礼を失しない限り、仮に保護者と意見が割れても、破局的なことにはならないものですし、概ね熱心な先生ということで、好印象を与えるものです。ただし、こうした接触の過程は学年主任、教頭先生などに報告しておいてください。学校がチームとしてコトに当たる際の基本でもありますし、保護者に誤解をされたときのバックアップも期待できます。場合によっては、上司にあたる先生方が「行き過ぎているな」と感じたとき、よいアドバイスがもらえるはずですから。

2009年4月2日

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